2026年04月06日
日本のため、世界のため、
「免震技術」を広げるスターツ~免震特集シリーズ(3)~
“免震のスターツ”として、免震技術の開発に力を注いできたスターツ。そこには、「地震から人の命と暮らしを守りたい」という強い使命感が根底にありました。日本国内での普及はもちろん、海を越えたトルコでの挑戦、そして地球環境を見据えた脱炭素への取り組みまで。スターツが描く未来のビジョンについて、スターツCAM株式会社取締役であり、スターツ免制震構造研究所の所長である中西が語ります。
目次
コストの壁を越える、木造×RC造のハイブリッド「モクメン」
「免震構造を採用すると、一般的な建築物よりも1割以上コストが上がる」というのがこれまでの常識でした。しかしその常識を覆すのが、木造と鉄筋コンクリート(RC)造を組み合わせた混構造の免震ビル、通称「モクメン」です。下層階をRC造、上層階を木造にすることで、建物全体の重量を劇的に軽量化しています。
中西――「木造4層分の重さは、RC造のわずか1層分に相当します。建物が軽くなれば、それを支える基礎や杭、下層階の柱梁をスリムにできる。つまり、材料費、人件費などの建築コストも抑えることが出来るのです。その結果、免震装置を加えても、一般的な耐震性能を有するRCビルと同等レベルのコストで建築することを実現しました。オーナー様が免震の採用を検討する上で、『1割高い』という最大のハードルを、技術開発でクリアしました」
このような発想の転換とも言える構造を実現できた背景には、スターツならではの強みがあります。多くの建設会社には得意とする構造(木造、鉄骨造、RC造など)があり、それ以外の建築構造は取り扱わないということも珍しくありません。しかしスターツは、創業当初から木造の低層住宅を手掛けつつ、同時にビル建設の実績も積み重ねてきました。木造建築は6,000棟以上、免震建物は600棟を超える実績があります。
2022年に竣工した「モクメン」のビル
中西――「スターツには木造とRC造、それに加えて免震技術のノウハウを熟知した設計者と現場監督が在籍しており、さらに設計から施工までを一気通貫で手掛ける体制を敷いています。この柔軟な『技術力』があるからこそ、異なる構造を組み合わせたハイブリッドな建物を実現できるのです。他社が真似しようとしても容易には追随できない、スターツ独自の優位性がここにあります」
RC造と比べCO2排出量を抑えられる木造の採用で、環境に優しく、地震に強く、そして経済合理性があること。この「モクメン」こそが、これからの都市建築のベストな解のひとつだと中西は胸を張ります。
国境を越えて。地震多発国トルコへ、日本の免震技術を
スターツの免震普及への取り組みは国内だけにとどまりません。地震多発国であるトルコにおいて、2020年から国土交通省の支援を受け、免震技術の普及プロジェクトを進めています。トルコでは100床以上の病院に免震構造が義務化されるなど、法整備においては日本より進んでいる面もありますが、実際に普及しているのは一部の重要施設に限られているそうです。
中西――「トルコでも一般の建物には免震が普及していません。国の行政機関や日本の大手商社、免震装置メーカーと連携し、『チームジャパン』としてトルコの大型免震病院のプロジェクトの免震の構造設計等の受注を目指しています。現地の建設会社とも基本合意契約、技術コンサル契約を結び、イスタンブールに日本式のプロトタイプの免震マンションの建設を実現しようと動いています」
また、日本国内での活動も、海外への技術普及を強力に後押ししています。兵庫県三木市には、実物の免震ゴムを阪神・淡路大震災級の激しい揺れで検証できる、世界でも稀な実験施設「E-アイソレーション」が2023年に完成しました。中西はこの施設の運営理事も務めており、免震技術の普及に尽力しています。
中西――「かつて、日本の免震業界はデータ改ざん問題という大きな試練に直面しました。もちろんスターツはデータと真摯に向き合い技術を磨き続けていますが、業界的にも各メーカーの自主検査に頼っていた体制が見直され、第三者機関による厳格なチェックが求められるようになったのです。この施設は、そうした反省と信頼回復への決意から生まれた場所でもあります。だからこそ、ここでの検証結果には重みがあります。そして、メーカーにとっても、新しい免震装置を開発するためにアメリカ等の海外の実験施設を使用していましたが、国内で実施することができるようになり、開発のスピードが速まることで、コスト・性能の向上に結び付くといったメリットも多くあります。現在、この施設にはトルコの免震装置メーカーも実験に訪れています。彼らは自社の製品を日本の厳しい基準でテストするために、わざわざ海を越えてやってくるのです」
技術そのものを提供するだけでなく、技術を検証し、育てる環境づくりにも貢献する。スターツの活動は、ハードとソフトの両面から世界の安全を支えています。昨年、株式会社ブリヂストンの新しい免震装置の第一号を建物に適用する際に、このE-アイソレーションにてスターツが実証実験を行い、メーカーの試験結果の精度を確認し、免震の採用を検討しているお客様に大変ご安心いただきました。
業界全体の底上げを目指して、ノウハウをオープンにする理由
現在、日本国内には約6,000棟の免震建物がありますが、その約1割近くをスターツが手掛けています。スーパーゼネコンが手掛けるような特殊な巨大建築物ではなく、人々の生活の場である中小規模のマンションや中規模ビルを中心に免震技術を普及させてきたところに、スターツならではの想いがあります。
中西――「日本の多くの人々が暮らす一般的な建物に免震が普及しなければ、本当の意味で社会を安全にしたことにはなりません。だからこそ、私たちは特許技術をオープンにし、業界全体の底上げを図っていきたいと考えています」
同じ業界の技術者にも「真似できない」と言われることがありますが、それは技術的な難易度だけでなく、営業、設計から施工、管理まで一貫して関わるスターツの体制と、社員一人ひとりの『お客様を守りたい』という想いがあるからこそ実現できているのだと中西は言います。その揺るぎない自信と覚悟こそが、日本の建築業界を変えていく原動力になるはずです。
中西――「われわれスターツは、スーパーゼネコンと呼ばれる大手建設会社と比べると、まだまだ大きい会社ではありません。しかし、お客様の想いを実現するための提案力や技術力においては、決して引けを取らないと思っています。そのことを確信した出来事があります。2025年にお亡くなりになられた建築家の原広司先生(京都駅や大阪梅田スカイビルの設計者)とともに狭小地に建つオーナールーム付きの免震マンション建築を協業させていただく機会がありました。オーナー様のオーダーは、『原先生のデザインを“免震構造”で提案して欲しい』というものでした。この案件は、競合相手であるスーパーゼネコンの会社でさえ『対応ができない』と回答するほど、狭小地、デザイン性、コスト、免震性能等の、複数の難しい建築条件を全てを実現しなければならない条件でした。しかし私たちスターツは、“中間層免震”のプランでオーナー様のご希望を叶える実現案を提示することができ、お選びいただくこととなりました。この案件を経て、業界から見ても難しいとされる建築条件でも、スターツには可能にする技術力があるのだと再確認できました」
原広司・アトリエ・ファイ建築研究所監修、スターツCAM設計・施工のオーナールーム付き免震賃貸マンション
「技術力」だけではなく、スターツが大切にしているのは社員ひとりひとりの「人間力」。それが他社の真似できない「優位性」を実現する要素の一つであると中西は語ります。
中西――「建築技術は日々進歩しており、現場の担当者から責任者、役員に至るまで、一級建築士等の資格を取り、建築技術について熟知した上でお客様や、一緒に建物を造る職人さんとも誠実に対話し、日々の新しい技術の開発や、改良改善を継続しないと、お客様にご満足いただける品質の高い建物はできません。スターツの場合、そこに営業担当の『建築・免震に関する知識、そして情熱』が掛け合わさります。プロジェクトごとに解決すべき課題は異なり、かつ複数の分野にまたがることがあります。AIやITの進化が目まぐるしいご時世ですが、課題解決の最適解を提案するためには、お客様の想いによりそった営業担当の提案力が必要なのです。また、スターツのように木造もRC造も免震も、戸建てもビル建設も、といった具合に幅広い技術を取得し、プロジェクトを経験できる環境も業界内でも珍しい組織です。こういった技術者を育むことができる環境がスターツにあり、本質的な課題解決のプロセスには人対人のコミュニケーションがモノを言う建築の世界は、AI、IT、ロボティクス化などはあくまで効率化の手段です。プロセスの全てをAIなどに置き換えることは目指さなくてもよいと考えています」
免震・レトロフィット・木造。3つの技術で脱炭素社会へ
中西は、これからの建設業が目指すべき姿として「免震」「レトロフィット(長寿命化)」「木造」の3つを挙げます。地震による建物の損失を防ぐ免震、既存建物を長寿命化するレトロフィット、そしてCO2を固定化するビル木造化の技術。これら3つの核心技術を組み合わせることで、脱炭素社会に貢献していくと語ります。
中西――「スターツ免制震構造研究所には現在36名の技術者がいますが、彼らに常に言っているのは『過剰な設計をするな』ということです。不安だからといって鉄筋を増やせば、それはコスト増になるだけでなく、環境負荷を増やすことにもなります。合理的に、しなやかに揺れを逃がし、無駄な資源を使わずに安全を確保する。それこそがプロの仕事であり、一級建築士としての地球環境に対する責任の取り方だと信じています」
日本のため、世界のため、そして未来の地球のために。スターツの免震技術は、単なる「揺れない技術」を超えて、ぶれずに持続可能な社会のインフラへと進化を続けます。
- 営業時間
- 9:00~18:00(水曜・日曜定休)
- URL
- https://www.starts-cam.co.jp/