2025年8月29日
施設の魅力を引き出す企画力と確かな管理・運営。
総合力で賑わいを生む公共施設の再開発

行政サービスの質の向上や、地域の活性化などを促すために、民間のノウハウや発想力を活かす官民連携事業(PPP/PFI)。より質の高い住民サービスを実現し地域課題を解決する手法として、その動きは全国に広がっています。総合生活文化企業としてまちづくりを手掛けるスターツグループも、行政と連携しさまざまな地域でプロジェクトを推進中です。その代表的な事例のひとつが、千葉県にある習志野市⽣涯学習複合施設「プラッツ習志野」。施設をただ運営するに留まらず、「市民の、市民の手による、市民施設の自主運営」を理念に掲げ、公共施設の新たな可能性を模索するチャレンジでもあります。施設運営にかける想いを、スターツアセットマネジメント㈱不動産コンサルティング部所属の二宮と、スターツファシリティーサービス㈱プラッツ習志野 統括マネージャーの安藤に聞きました。
挑戦の始まり。それは、「地域の声」に耳を澄ますことから
京成本線「京成大久保」駅から徒歩1分。かつてこの地域には、公民館や市民会館など、複数の公共施設が点在していました。市民のサークル活動や発表会など、それぞれの施設に、市民一人ひとりの物語が刻まれており、この場所で暮らしてきた人々の強い思い入れがありました。

プラッツ習志野開業前に①大久保公民館・市民会館 ②屋敷公民館 ③あづまこども会館 ④生涯地区センターゆうゆう館
⑤勤労会館 ⑥大久保図書館 ⑦藤崎図書館と点在していた機能を一か所に集約

建物はもちろん公園の管理もスターツファシリティーサービス㈱が担います。
駐車場棟はスターツアメニティー㈱の時間貸駐車場「ナビパーク」が運営・管理
しかし、時の流れとともに建物は老朽化。そこで、点在する施設群を集約し、公園と一体となった新たな交流拠点として再生したのが「プラッツ習志野」です。本事業で新たに新築した公民館・図書館棟と既存建物をリノベーションした別棟からなる北館(公民館・図書館・市民ホール)と、既存建物をリノベーションした南館(体育館・こどもスペース等)を中心に、野球場、パークゴルフ場などが一体となった⽣涯学習複合施設として生まれ変わりました。

北館にある自習スペースも備えた中央図書館

習志野市民ホールは324席。市民の発表会やコンサートに活用

南館にある中央公園体育館。近隣の学校の部活動の練習場としても利用されています
二宮───「地域の皆さんからは当然、旧施設群の閉館を惜しむ声も多くありました。その気持ちを受け止めながら、新しい価値をどう生み出すか。それが私たちの使命でした」

そう語るのは、このプロジェクトを推進してきたスターツアセットマネジメント㈱ 不動産コンサルティング部の二宮です。スターツコーポレーション㈱を代表企業として習志野大久保未来プロジェクト㈱を組成し、スターツCAM㈱が設計・監理・建設を、スターツファシリティーサービス㈱が管理・運営のそれぞれの業務で統括的役割を担い、スターツアセットマネジメント㈱がプロジェクトマネジメントを行うという形で、社外の構成企業・協力企業とともにグループ会社が一丸となり取り組んだプロジェクトです。スターツグループが作成したプランで、施設を建て替えるだけではなく、市民が自ら運営に参加し、新たなコミュニティを育む舞台を創り、100年後の子どもたちにつなげていくという、未来を見据えたビジョンを掲げました。プラッツ習志野の統括マネージャーを務める安藤は、このビジョンについてこう話します。

安藤───「単に施設の管理業務を請け負うだけに留まらず、私たちスターツが運営に携わるなら、地域社会の活性化と持続可能なまちづくりに深く貢献していきたい。そのためには、市民が『習志野市をこうしていきたい』『こうしたら面白いのに』といったアイデアを自由に持ち込み、ともに実現していくことが大切です」
そんな理想を胸に、老朽化した施設群を集約し、生涯にわたる”学び”と”交流”を育む拠点として再生させていく。この先進的な取り組みは、全国の自治体や関係省庁からの視察やヒアリングを受けるなど、集めています。
二宮───「とはいえ、我々のような民間に委託することで、これまでのサービスが大きく変わってしまうのではないかと、住民の方々には不安な思いもあったと思います。説明会や工事現場の見学会を開催し、さらには、『新しい施設で何をしたいか』を市民自身が語り合うワークショップも重ねました。そういった地域住民との対話を経て、『新しい施設を楽しみに迎えよう』というポジティブな空気、歓迎の機運が醸成されていったと感じています」

こうして生まれた「プラッツ習志野」に隣接して、若年層の地域参加を促すことを目指す、店舗と学生向け賃貸住宅の複合施設「プロシード京成大久保」もオープン。人々が集い、学び、活動し、そして暮らす。複合的な機能を持つこの場所は、新たな”まちの拠点”としての役割を担っています。
スターツだから貫ける「利用者第一」の哲学
誰もが使いやすい、まちの拠点を実現するためには、どんな人々でも活動しやすい環境整備が不可欠です。

南館側から撮影したプラッツ習志野の全体像
例えば、敷地内の高低差の問題。足の不自由な人々やベビーカーを押すファミリーでもご利用いただきやすいよう、施設整備期間中の仮設スロープを用意するだけでなく、駅から続く施設前の道路の高さから、出会いのひろばまで直接行き来するためだけのエレベーターを、「プロシード京成大久保」内に採算を度外視して設置しました。
こうした柔軟な計画を可能にしたのが、企画から設計、施工、管理、運用までを一気通貫で手掛けるスターツならではの総合力です。もしこれが縦割りの組織であれば、「その費用はどの部署が持つのか」という議論だけで頓挫しかねません。しかしグループ全体で事業の成功を目指すスターツグループは、「街の価値を高めるために必要だ」というシンプルな判断で、数々の難題を乗り越えてきました。

二宮───「そうした思想は、施設の賑わい創出にも一貫しています。千葉県の人気カフェ『PHILOCOFFEA(フィロコフィア)』の『プロシード京成大久保』への出店は、スターツが持つ不動産事業のネットワークが活きた好事例です。スターツが手掛けている「ニューコースト新浦安」のテナントリーシングから始まったご縁で、まちづくりへの想いに共感していただき、出店が決まりました。カフェは市民へのアンケートでも強く要望されていたもので地域外からも多様な客層を呼び込めるブランド力は魅力的ですが、何よりも理念を共有できるテナント様にご入居いただけたことは非常に幸運でした。このご縁により、まちに更なる価値を付与することが出来たと思います」
設計からテナント誘致まで、すべてに貫かれているのはスターツだからこそ実現できる「利用者第一」の哲学です。
民間だからこそ挑める「未来への投資」
ただ、環境や施設を用意するだけでは「市民による自主運営」という理想は実現しません。自ら企画し、行動するきっかけをどう作るか。そのためのエンジンとして、プラッツ習志野には「フューチャーセンター」という、ユニークな空間が設けられています。

安藤───「フューチャーセンターは、『自分たちの暮らしを、自らの手でもっと楽しくする。そのための市民の挑戦を応援するコミュニティスペース』。地域活動の情報発信・交流の場として機能しています。『ここに来れば何かがある』『同じ志を持つ仲間に出会える』、そんな期待感を抱かせる場所です。私たちが何かを提供するというより、市民の皆さんが何かを生み出すきっかけを作る。放っておいても施設が活性化していく、そんな有機的なコミュニティの形を模索しています」
「市民の手で未来を創る」。そんな理想を実現していくためには、収益事業として成立させていくことも必要です。そのための具体的なアクションも行っています。
安藤───「自走性を向上させるため、スターツが行う自主事業として、例えば、市と協議して公園の敷地内で手ぶらで楽しめるBBQ事業などの収益を生み出す取り組みを行っています。将来的には、市民がみずからイベントの企画推進などをできるようにしていきたいと思っています。フューチャーセンター事業内で『市民ファシリテーター養成講座』といって、企画を形にするスキルを市民自身に学んでもらうことで、『受け手』から『担い手』への成長を促すなど、将来に向けた取り組みも同時に進行しています」
そして、もう一つの重要な仕掛けが、「プロシード京成大久保」内にある学生向け賃貸住宅「LIGHT UP STUDIO」の地域連携プログラム。入居者である近隣大学に通う学生たちへ地域活動への参加を促します。それは、若い世代に「地域の一員」としての自覚を育んでもらうと同時に、未来の「まちの担い手」を育てるための、長期的な取り組みでもあります。

「LIGHT UP STUDIO」の共用リビング
二宮───「習志野市は学生が多いまちですが、卒業すると都内や県内の他地域に移り住んでしまう人も多い。そこで、プログラムを通じてプラッツ習志野のさまざまなイベントや地域活動に参加してもらうことで、『活発で面白いまち』というイメージを醸成し、また住みたいと思ってもらえたらいいなと考えています。こうした活動は学生にとっても、多世代と交流し社会性を身につける貴重な機会になるはずです」
理想の実現に向け、挑戦は続く
今年で開業から6年。施設を訪れる人々の顔ぶれは、確実に変わりました。

二宮───「以前は近隣住民のための施設でしたが、今では市外からも訪れる人も多くなりました。施設の存在を知らなかった学生や、小さなお子さん連れの家族も増え、今までとは違う賑わいが生まれています」
安藤はさらにその先を見据えています。この施設の最終的な理想は「住民自治」。地域密着を掲げるスターツが、自らの哲学として提案した未来像です。
安藤───「将来的には、施設の受付やイベントの企画運営まで、すべてを市民の手で作り上げる。そんな施設を目指しています。指定管理者としての任期は20年なのですが、その間に、運営の比率を市民とスターツで半々くらいにしていくことが目標です」
「市民による自主運営」という言葉は、聞こえは美しいですが、それは指定管理者であるスターツが「責任」と「収益」のバランスに悩み続ける茨の道でもあります。
安藤───「私たちは自ら収益を生み出し、未来のための投資を行っていかなければなりません。日々運営していると、本当にいろんなことがあり、さまざまなご意見から気付きを得ます。そこから得たノウハウも、すべては次の事業に繋がる財産です」

安藤───「『面白いことが起こるまち』という習志野市のイメージを、プラッツ習志野が広げていくお手伝いがしたい。このまちに住みたくて引っ越してくる人が現れるようなきっかけを、どんどん作っていきたいと思っています」
>>スターツが手掛ける公有地活用・都市開発事業の事例はこちら
https://www.starts.co.jp/publicworks/
生涯学習複合施設プラッツ習志野
- 住所
- 千葉県習志野市本大久保3-8-19
- URL
- https://narashino-future.jp/
- 営業時間
- 9:00~18:00(土・日・祝)
- URL
- https://www.starts.co.jp/asset/
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