レポート
第66回東日本実業団陸上競技選手権大会
第66回東日本実業団陸上競技選手権大会は5月18~19日、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で開催され、6名の選手が出場しました。日本陸上競技選手権大会に出場できない選手にとっては、上半期の大きな目標となる東日本の選手権大会です。それぞれの選手が、現状の実力を出し切り、自己記録を更新することを目指して力走しました。
4月に就任した新しい監督の方針で、春先はスピードをテーマに競技力向上を目指してきた選手たち。その成果が少しでも垣間見ることができたでしょうか。トレーニング状況からレース内容を振り返っていきたい。(以下、監督レポート&出場選手コメント)
<大会1日目> 女子1500m
初日の1500mには、ワングイ・エスター・ワンブイと大沼亜衣が出場。ともに自己ベストをマークした。とくに、タイムレースの遅い組で出走することになったワンブイは(資格記録がないため)、1500mを走るのは久しぶりだったが、前半から積極的に飛ばして4分17秒と快走した。入りの400mが65秒と想定よりも3秒も速くなったツケが後半にきて失速してしまったが、本人に落胆の色はなく「スピードが出るようになっていることが実感できたレースだった」と満足顔。
速い組で走っていたら、かなりの好記録が出ていたと思われるが、それは次回に持ち越しになった。彼女もそう感じたのだろう、「もっともっとフォームを良くしてトップ選手になりたい」「新しいスタッフの指導で、やるべきことが沢山見つかり楽しい」と目を輝かせていたのが印象的だった。

大沼も高校以来の1500mだったという。慣れない中距離レースに3周目のペースが落ちてしまったが、最後にスパートを利かせて自己ベストをマークした。
「まだまだスピードを出すこと・持続することができないですが、課題は明確なので、それをクリアしていきたい」と実践でしか感じられない自己評価ができたことで、さらに前向きな気持ちになった模様。新人選手だけに今後の飛躍が楽しみだ。
▶ワンブイ・エスター・ワングイ 4分17秒32(2組1着、総合4位)☆自己新
▶大沼 亜衣 4分39秒47(2組8着、総合21位)☆自己新

<大会2日目> 女子3000m
2日目の3000mには、佐藤鳳羽と中山優奈が出場。二人とも春先は、体調不良などによる準備不足であることは否めない状態での出走となった。
とくに、佐藤は貧血症状に悩まされており、この日も苦しいレースが予想されたが、そんな心配は“どこ吹く風”という具合に、1000m過ぎから2400mまで集団を引っ張る積極的なレースを展開した。体調を考えると大胆な行動だが、「ペースが遅かったので、前に出ただけです」と目標タイムを見据えた“強い気持ち”は、チームメイトを鼓舞するものになった。

中山は、大学時代に長引いた怪我の影響で、今レースに向けた実践練習は不足しての出場となった。そのため、最後の1000mで失速してしまったのはやむを得ないと思うが、本人の気持ちは違ったようだ。
「スターツのユニフォームを着て走る初の公式戦で、不甲斐ない走りをしてしまった。」と悔しそうに話す姿は、敗戦を糧に自分を奮い立たせるアスリートであることを物語っている。楽しみな新人選手だ。
▶佐藤 鳳羽 9分51秒34(1組7着、総合19位)
▶中山 優奈 10分00秒59(1組9着、総合21位)

◎佐藤選手のコメント
「今回は万全の状態ではなかったけど次につながるレースができたと思います。
積極的に引っ張ることはできたけど、ラストは抜かされた時に対応できず自分の弱さが出てしまいました。目標タイムも切ることができなかったのでしっかり練習を積んで自信をつけて次のレースに挑みたいです。」

◎中山選手のコメント
「公式戦デビューを迎えることが出来ました。前回の反省から、中盤の粘りと後半の切り替えを課題に練習に取り組みました。レースでは積極的なスタートと粘る走りに対して向き合うことができましたが、走りを高いところで維持しないといけない後半に力不足な走りとなってしまいました。
前回から今日のレースに活きたところ、更に課題として見つかったこと、その一つ一つにしっかりと向き合い、絶対に強くなるという思いを結果に残していけるように、明日からまた精進したいと思います。応援ありがとうございました。」

<大会2日目> 女子5000m
5000mには、タイムレースの遅い組に對馬千紘と大沼、速い組にワンブイと西川真由が出場した。
對馬は、金栗記念陸上後から体調不良や捻挫のアクシデントが続き、明らかに練習不足だったが、持ち前のガッツで集団に食らいつき、春先初戦の金栗記念と同タイムで走破した。「まったく練習できていなかったのに、初戦と同タイムなんて、初戦は何していたのだろう!と思った」と自虐的に4月中旬のレースを振り返り、自分の走力を再確認していた。
大沼は5000mのレースでは良いところがなかったが、スピード練習を重視したトレーニングによる持久力不足が露呈したと思われる。今後を見据えた中で、感じた“こと”を今後に繋げてくれることを期待したい。

▶對馬 千紘 16分31秒84(1組7着、総合29位)
▶大沼 亜衣 17分07秒10(1組17着、総合42位)
◎大沼選手のコメント
「1500mでは自己ベストを更新することが出来ましたが、両方の種目とも自分の力不足で目標の記録には届きませんでした。今回のレースでよかった点や課題を見つける事が出来たのでしっかり克服し、強い選手に慣れるように頑張って行きたいと思います。
これからも応援の程よろしくお願いします!」

◎對馬選手のコメント
「いつも温かい応援ありがとうございます。金栗記念が終わってから体調・足のコンディションをうまく整えることができず、練習を積めていない中のレースで不安が沢山ありました。
レースでは自分の今の状態を知ることができました。前半はなんとか集団の後方に付いていましたがラストは粘れず、練習不足を実感しました。
次の大きな目標である7月のホクレンディスタンスでは私らしい積極的なレースでラストも勝ち切りたいです。いい走りを追求して、皆様に喜んでいただける結果を出します。これからも応援よろしくお願いいたします。」

ワンブイは、外国人選手6人で形成された集団で流れに乗り、淡々と走っていた。表情も苦しそうではなかったが、後半のペースアップに対応できなかったところを見ると、スピード重視のトレーニングによる持続力不足が原因と思われる。
ただ、1500m後に本人が話したように、気持ちは前向き。「今は、今までやったことにないトレーニングをしている段階なので、新たな可能性を見出せそうな感じ。ホクレンDCでは大幅な自己記録更新を目指したい」と、やる気に満ちている。
▶ワングイ・エスター・ワンブイ 15分35秒97(2組6着、総合6位)

◎ワンブイ選手のコメント
「I am happy for everyone and everything, I started a with 1500m the race was good I ran my best time of 4 minutes 17 seconds I am happy next time it will be good time, for 5000m it was not good but I thank my God I do my best, it is not the last race I will work hard until I make my time of 14,57~15,05.」
(1500mからスタートし、4分17秒の自己ベストで走ることができて良かったです。次回は良いタイムになるでしょう。5000mは良くありませんでしたが、これからまた最善を尽くします。これが最後のレースではありません、14分57秒~15分05秒を出すまで一生懸命頑張ります!)

西川は、速いペースに臆せず、日本人の先頭集団の前方に位置して走り、積極的に攻めのレースを貫いた。2000m6分15秒通過は、彼女のベスト記録を考えると速く、徐々にペースを落としていったことは仕方ないことだが、その後も粘りの走りを続けた精神力は評価できる。
「選手権大会なので、順位にこだわって走った」と話した通り、外国人選手を除くと10位だった。「記録には満足していないが、次に繋がるレースができたと思う」と納得顔で自分の走りを評価していた。
▶西川 真由 16分10秒54(2組16着、総合16位)

◎西川選手のコメント
「入賞と15分台を目指していました。準備段階では少し不安が残る中でも納得いくように合わせてこられました。スタートしてからはいい流れに乗れていましたが2000m過ぎから1人になってしまい中盤の粘り方に課題が残りました。ですがラストは切り替えることができ、この点は練習の成果を出せたと思います。
この先は一旦夏に向けて練習を継続して積む期間に入ります。夏に記録を残せるように頑張りたいと思います。これからも応援よろしくお願いします。」

総括すると、体調不良や怪我もあって全員出場とならなかったことはチームとしては反省すべきところだが、出場した選手全員が前向きにレースに臨み、次のステップに移行するために最善を尽くしたレースが多かったと感じる。今大会後に、スピード持続力の強化を図ることを考えると、体調さえ整っていけば、チームとしては、大きく前進いけそうな気配にある。切磋琢磨と自律の精神で、個人とチームの勢いをさらに増していきたい。
