2025年3月31日
大ヒット小説「あの花が咲く丘で…」
原作者が若者に伝えたかったこと

©2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会
スターツ出版発行の『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は2020年にTikTokで注目を集め、現代の女子中学生と特攻隊員の恋物語という、一見トリッキーなストーリーにも関わらず幅広い年代の読者を魅了しました。2023年12月には実写映画化され、スターツも製作委員会に名を連ねました。映画の累計動員数は350万人を突破(2024年12月時点)、原作小説も、シリーズ累計150万部現在(2025年3月現在)を超える大ヒットになっています。
今回は本作の原作・ 汐見夏衛(しおみ なつえ)先生と編集担当の座談会の様子をお届けします。本作を通じて若者へ届けたい想い、風化させてはいけない歴史への想いを語ります。

(左:汐見夏衛/作家,右:相川有希子/編集担当)
スターツ出版が運営する小説投稿サイト『野いちご』に趣味で小説を投稿していた汐見先生。スマホで書ける手軽さが無かったら、小説は書いていなかったと言います。恋愛モノやファンタジーなど、思い思いの作品を書き上げる中、ふと戦後70年ということが新しい作品の題材のヒントになったそう。
汐──「高校の国語教員をしていましたが、最近の子どもたちは、怖いもの・残酷なものから目を背けてしまいます。しかし、戦争という悲しい歴史は決して繰り返してはいけないものですし、ずっと語り継がないといけない。授業や説教のように伝えても届かないなら、フィクションではどうか。戦争を知ってもらうきっかけになるなら、それでもいいのではないかと思いました。」
ご自身が鹿児島県出身で、学校行事で「知覧特攻平和会館」を訪れたことがある経験から、特攻隊×恋愛という発想を思いついたそうです。しかし、『野いちご』の読者は小中学生の女の子たちが中心。小説『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は、読者ランキングで上位に入ることはなく、賞レースでの受賞歴もありませんでした。その作品が、なぜ書籍として発行されることになったのか。編集担当の相川さんは当時を振り返ります。
相──「読者から寄せられる感想に、とにかく熱いものが多かったんです。当時はスターツ出版文庫という新しいレーベルを創刊したばかりで、多様な作風の書籍化に挑戦していました。読者からの想いが強い作品であれば、いけるのではないかと思いました。」
2016年にスターツ出版文庫から発刊された本作は、すぐにヒットしたわけではなく、4年後の2020年に思いがけず注目を集めることとなるのです。

相──「作品がヒットするきっかけになったのは、読者によるTikTokへの投稿、いわゆる口コミです。自分たちから押しつけたわけではなく、自然と広がっていったことに驚きました。まして戦争が題材の作品なので、人づてに想いが広がっていったのは、心からうれしかったですね。」
2021年に映画化の打診があったものの、コロナ禍もあり、企画はいったんストップ。2023年に撮影がスタートしましたが、映画化には不安もあったそう。
汐──「映画になるということは、今まで以上にさまざまな人の目に触れます。その中には、小説や映画を見ていないのに、批判してくる人たちもいる。それには怖さもありました。でも、自分が気に入っていたシーンや、読者が好きだと言ってくれた台詞をプロの役者さんたちが素敵に再現してくれて感激しました。小説は書き上げてしまったら、手が離れた子どものような存在です。映画の中で成田洋一監督がプラスされたエピソードを見て、“あ〜小説もこうすればよかった。”と思ったくらい(笑)。主題歌も言葉にできないくらい素晴らしくて、本当にたくさんの方に支えられてできた作品です。」
最後にあらためて、小説・映画を通じて、伝えたい想いを聞きました。
汐──「二つあります。一つは戦争という悲しい歴史を繰り返したらいけない、風化させてはいけないということ。もう一つは、今という平和な時を大切にしようということです。あくまで物語はフィクションなので、人それぞれの感想があっていいと思いますが、この作品と出会った方が少しでも今の平和な日々に感謝したり、そばにいてくれる人を大切にして、一生懸命生きようと思う人が増えてくれたらうれしいです。」
スターツ出版では本作が投稿された『野いちご』をはじめ、『Berry’s Cafe』や『ノベマ!』といった読者層ごとの分かれた小説投稿サイトを運営。サイトで人気の出た作品を多数、書籍化&コミカライズしています。
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