2026年02月05日
古い建物を未来につなぐ。
レトロフィット工法で歴史的建造物を免震化
歴史ある建物には、その街の記憶や人々の想いが刻まれています。しかし、地震大国である日本において、建物を維持する上では耐震性が大きな課題となります。「壊して建て直すしかないのか」と悩むオーナー様に、スターツが提案するのが「免震レトロフィット工法」です。建物を壊さず、その形を保ちながら免震化するこの技術をなぜスターツは手掛けるようになったのでしょうか。開発秘話と、免震がどのように未来へと貢献するのかについて、スターツCAM株式会社の取締役であり、スターツ免制震構造研究所の責任者を務める中西に聞きました。
目次
「古いから建て替える」だけが正解ではない時代へ
スターツの免震技術のラインナップは多岐にわたります。それは、決して「技術のショーケース」を作るためではなく、一つひとつの技術がお客様が抱える困難を解決するために生み出された結果です。建築コストや工期、そして構造など建物の特性やオーナー様の課題を解決するために、免震の技術開発を続けてきました。その中でも、近年特に注目を集めているのが、既存の建物を壊さずに免震化する「免震レトロフィット工法」です。
中西――「新築への建て替えは、解体費用や仮住まいのコストがかかる上、大量の廃材が出るため環境負荷も高いことが課題です。愛着のある建物や歴史的価値のある建物を残しながら、地震への不安を取り除きたいというニーズは年々高まっています。しかし、従来の工法ではコストが見合わず、断念されるケースが多くありました」
そこでスターツは、お客様のご予算や建物の状況に合わせて、オーダーメイドのように工法を開発してきました。その代表例とも言えるのが、歴史的建造物の保存再生プロジェクトです。
「半額で実現できないか」。難題から生まれたジャッキアップレス工法
愛知県岡崎市にある「岡崎信用金庫資料館」は、築100年を超えるレンガと石造りによる貴重な建築物です。2016年の熊本地震での文化財被害を目の当たりにしたオーナー様の「後世に残すために免震化したい」という強い想いからプロジェクトは始まりましたが、ご提示いただいたご予算では“通常の”免震技術の採用が難しい金額でした。
しかし同時に「この金額であれば導入できる」という、世の中のリアルなニーズを反映した声とも言えます。どんなに性能が良くても、コストが合わなければ技術は普及しません。中西は、この難題を「免震を安価に実現し、世に広めるための技術革新のチャンス」と捉えたのです。
中西――「普通ならと断るのかもしれません。しかし、私たちは『どうすればコストを削れるか』をゼロから考えました。一番お金がかかるのは、建物をジャッキで持ち上げる工程です。ならば、持ち上げずに免震装置を挿入すればいい。こうして開発したのが『ジャッキアップレス工法』だったのです」
建物の下に薄い鉄製の水枕のような「フラットジャッキ」を挿入し、そこに固まる樹脂剤を注入して圧力をかけることで、建物を浮上させることなく荷重を支えます。これにより、工事中の地震リスクも抑えつつ、大幅なコストダウンを実現しました。
フラットジャッキ
築100年のレンガ建築も、宮大工の木造本堂も
岡崎信用金庫の事例では、もう一つの技術革新がありました。古い建物ゆえに建物図面が残っていなかったため、最新の3Dレーザースキャン技術とBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を組み合わせ、自動計測した点群データをもとにBIMモデルを作成。建物の形状だけでなく、部材ごとの重量まで正確にモデリングしたのです。
3Dモデル化された建物
中西――「レンガ一つひとつの比重を計測し、どこにどれだけの荷重がかかっているかを精密にシミュレーション。その結果、建物重量の誤差1%以内の精度でモデル化することに成功しました。スターツのBIMの精度の高さ、いままで培ってきた技術があってこそです。免震とBIM、スターツCAMが持つ2つの強みが如何なく発揮されたと言えますね」
また、東京都大田区にある池上・本妙院本堂の事例も象徴的です。築90年を超えるこの木造の本堂は、耐震性を高めようと壁を増やせば、由緒ある意匠や使い勝手が損なわれてしまうという課題を抱えていました。
すべり支承の装置の一例
「そこで採用したのが、建物の下に鉄骨の架台を組み、その下に『すべり支承』という免震装置を設置する手法です。建物を支える架台ごと浮かせ、地面と切り離すことで、激しい揺れを受け流す構造に変えました。伝統的な木造建築の美しさをそのままに、安全性だけを最新の技術でアップデートする。国土交通省の『サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)』にも採択されたこのプロジェクトは、多くの文化財を守る新たな希望となっています」
建物を1.5mジャッキアップした様子
思い出の詰まった建物を、技術の力で未来へつなぐ
古い建物を残すことは、単に文化を守るだけでなく、脱炭素社会の実現に向けた重要なアクションでもあります。スクラップ・アンド・ビルド(解体と新築)を繰り返す時代から、今あるものを長く大切に使う時代へ。スターツの免震レトロフィット技術は、そんな世の中の転換点を支える重要な役割を担っています。
「建物が古いからといって諦める必要はありません。歴史的価値がある建物はもちろん、ごく普通のマンションやビルであっても、免震化することで安全性を高め、資産価値を維持向上することができます。『残したい建物がある』という方は、ぜひ一度相談していただきたいです。技術で解決できる選択肢が、スターツには必ずありますから」
- 営業時間
- 9:00~18:00(水曜・日曜定休)
- URL
- https://www.starts-cam.co.jp/
新着記事
-
進行中のプロジェクトから見る。長く愛される住まいの形
-
古い建物を未来につなぐ。レトロフィット工法で歴史的建造物を免震化
-
本当に安心できる住まいを目指して。免震技術が日本に必要な理由
-
沖縄と本土をつなぐ架け橋へ。スターツの総合力で地域に貢献を
-
沖縄で挑む不動産ワンストップサービス。地域密着で得た地元の信頼
記事のジャンルから探す
詳細はこちら
記事のジャンルから探す