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タイ工場売却の潮流 / 売却時の注意点(日系企業向けガイド)


タイ工場売却の潮流 / 売却時の注意点(日系企業向けガイド)

はじめに:タイ工場売却を検討する企業が増加している背景

近年、タイにおける日系企業の工場売却のご相談が増加しています。その背景には、ASEAN諸国への生産拠点分散、製造業の高度化、脱中国の潮流といった複数の要因が関係しています。加えて、タイ国内の賃金上昇や現地スタッフの確保難、老朽化した設備の更新コストなども売却判断に影響を与えています。

特に本社が日本にある中堅・中小企業にとっては、撤退や再配置を視野に入れた資産の整理が経営課題となっており、戦略的な売却計画が求められています。本記事では「タイ工場売却の潮流」「日系企業向け」「売却時の注意点」をキーワードに、タイ現地法人STARTS International (THAILAND) Co., Ltd. 責任者からの情報を交えてご案内してまいります。(本情報は掲載日時点のものであり、将来変更になる可能性があることをあらかじめご了承願います。)




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1.タイにおける工場売却の現状と市場トレンド

1-1)売却案件の増加と背景

コロナ禍を契機に、企業がグローバルサプライチェーンの見直しを迫られる中、タイ工場の売却の相談が増加しています。多くの企業が、次のような理由で売却を決断しています:

・他のASEAN諸国(ベトナム、インドネシアなど)へのシフト
・地価の上昇による資産売却益の期待
・現地スタッフの労務コスト増大

さらに、タイ政府による工業団地の再整備計画や周辺エリアの土地再開発が進む中、インフラ環境の向上や新たな産業誘致の動きが活発化しており、今後の成長を見越した企業からの用地取得ニーズが高まっています。これにより、対象エリアにおける不動産の売却に対して関心を示す買い手が増加しており、現在は売却を検討する上でも非常に好機といえる市況が形成されています。

1-2)買い手としての主なプレイヤー

タイ工場の売却先として多いのは以下のような企業・団体です.

・ローカルタイ企業(生産力強化目的)
・ASEAN域内の外資系企業(事業拡張)
・不動産ディベロッパー(再開発)

特に、中華系・台湾系の電気自動車・IT関連企業を中心とした新興プレイヤーが、関連会社を多数引き連れて進出しており、これも工場価格の上昇要因の一つとなっています。
これらのプレイヤーは、立地条件・敷地面積・建物の状態・法的権利関係を重視しており、売却前に準備すべき情報が多岐にわたります。


1-3)価格相場の傾向と影響要因

売却価格は地域・工業団地・土地の形状・建物の状態によって異なります。また、建物がリースか所有か(freehold vs leasehold)、環境規制の影響、入居中のテナント有無なども価格に影響します。例えば、バンコク近郊(バンナー、アマタチョンブリ)では1ライ(1,600㎡)あたりの価格が1,000~1,400万バーツで、15年前比較すると3~4倍の価格になっています。

また、建物がリースか所有か(freehold vs leasehold)、環境規制の影響、入居中のテナント有無なども価格に影響します。




2. 日系企業が工場を売却する際の主な注意点

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2-1)売却前の情報整理と整備が、買い手の意思決定を左右する

タイでは外国企業が土地を直接所有することは原則として認められておらず、 BOI(タイ投資委員会)認可や、タイ法人を通じた所有などが一般的です。このため、売却前には以下の整理が必要です:

・所有権の名義確認と登記簿の整備
・建物検査完了証など必要書類の有無
・BOI*特典の有無とその移転可否
・土地使用目的やゾーニングの制限

これらの情報が明確でないと、買い手からの信用を得られず、交渉が難航する原因となります。

書類が不足している場合には、代替となる書類の取得や、新たに必要な書類の作成が求められます。また、政府が定める**ゾーニング(用途地域。工場や商業施設など、業種ごとに使用が許可されている区域)**が、物件購入時と比較して変更されているケースもあるため、事前の確認が重要です。実際に、ゾーニングの変更を把握せずに物件を紹介し、買い手が見つかった後に「希望する業種での使用が認められていない」と判明。契約に支障をきたすといったトラブルも発生しています。

BOI*Board of Investment):タイ政府が管轄する投資促進機関であり、指定業種に対して税制・関税・外資規制等の優遇措置を提供することで、国内外からの投資拡大を図っています。


2-2)環境・労働関連法規への対応

売却後も一定期間、元所有者に責任が残る場合があるため、以下の点について事前確認が必要です。
・土壌汚染・排水処理施設の状態
・労働契約や退職金・解雇ルール
・建屋の安全基準や違法増築の有無

特に製造業では、環境に関する指摘が入ると行政処分や損害賠償に発展する可能性もあります。 

実際には、築年数が古い物件では瑕疵担保責任が免責となるケースが多く、現況有姿での引き渡しを希望する売主が一般的です。そのため、買主負担で土壌汚染調査を行うケースもあります。建物の築年や状態によって、売主の責任範囲は大きく異なるため、契約前の確認が重要です。

2-3)税務処理と為替リスク

売却時には法人税・付加価値税(VAT)・源泉税などが発生します。さらに、日本への送金時には為替リスクや外貨規制も影響します。
・売却益課税(Income Tax):(売却額の1%)
・売買契約書の形式(VAT課税対象か否か)
・送金の際の銀行手続きと税務申告

現地の会計士や税理士と連携し、売却スキームを慎重に設計することが必要です。また日本本社との連結決算に関わる場合には、日本側の会計処理にも影響が及び可能性があります。このため、事前に日本側の専門家へも確認することが重要です。



3. 工場売却の進め方とスケジュール

3-1)売却の検討からクロージングまでの流れ

以下は一般的な工場売却のプロセスです:
1. 必要書類の確認と整備
2. 現地資産の棚卸と評価
3. 社内稟議と意思決定
4. 仲介業者・アドバイザーの選定
5. 売却条件の設定とマーケティング
6. LOI(基本合意書)の締結
7. デューデリジェンス(買い手側)
8. 契約交渉・締結
9. クロージング・資金受領

平均的には上記の1.~5.で1~2カ 月。LOI(基本語合意書)の締結から引き渡しまで、買い手の政府への申請なども含めると2カ月~12カ月かかります。(BOIやIEAT*の手続きの進捗に左右されます)


IEAT*Industrial Estate Authority of Thailand):タイ工業団地公社。タイ政府傘下の機関で、工業団地の開発・運営を行い、外国企業への土地利用特例などを提供しています。

3-2)現地パートナーとの連携の重要性

タイでは言語・文化・法制度の違いから、信頼できる現地パートナーの存在が不可欠です。以下のような専門家との連携を推奨します。
・不動産仲介会社(現地市場の知見)
・弁護士・司法書士(契約・権利関係)
・会計士・税理士(税務処理・資金送金)

日系に強いパートナー企業を活用することで、売却時のトラブルを最小限に抑えることができます。

3-3) 我々にできること

STARTS International (THAILAND) Co., Ltd.では、単なる売買仲介にとどまらず、企業様のご負担を軽減しつつ、資産売却全体にわたる実務支援を行っております。 具体的には以下のようなプロセスにおいて、丁寧に伴走いたします。
・必要書類のご案内および不足書類の作成・申請サポート
・物件の価格査定および買主探索
・契約手続きから引き渡しまでの全体マネジメント 査定においては、単なる市場価格の算出にとどまらず、会計・税務・経営の各観点を踏まえ、企業様の資産売却方針や資金活用目的に即したご提案を心がけております。 簿価・減価償却状況・売却損益の試算・税務影響・社内承認プロセスなど、必要な要素を多面的に考慮し、将来の事業戦略に資する判断をサポートいたします。 また、タイ特有の商慣習や法令への理解はもちろんのこと、日本企業様が特に気にされるポイントや遵守事項についても、丁寧に整理のうえ、分かりやすくご案内いたします。 買主様からの信頼確保を意識した、正確かつ誠実な対応を徹底しております。



4. まとめ:タイ工場売却は戦略的意思決定の一環

タイ工場の売却は、単なる「撤退」ではなく、資産の最適化と再投資を目的とした戦略的な意思決定です。日系企業がこれを成功させるためには、事前の準備、現地との連携、法務・税務の理解、社内調整など、多くの要素が絡み合います。 本記事が、売却を検討する企業の一助となり、スムーズかつ納得感のある取引に繋がることを願っております。 (海外拠点一覧はこちら



5.最新相場資料

より詳しい情報をご希望の方は、下記のお問い合わせフォーム内、5.ご興味のある内容 【海外不動産の売却】をご選択のうえ、6.【タイ工業団地】と記載の上ご送信ください。ご希望の方に弊社現地法人が調査をいたしました、最新の工業団地の相場mapを送りいたします。 お気軽にお問合せくださいませ。

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