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海外不動産通信:日系企業から見るタイの現在

日系企業から見るタイの現在

はじめに

昨今、人口増加や経済成長、地政学的リスクの変化などを背景に、海外拠点の戦略の見直しをされる日系企業が増えています。こうした状況の中、現地の不動産情報(市況や慣習)は非常に重要であり、事業全体への影響度は大きいです。当社は不動産賃貸会社、不動産売買会社として22か国34都市に拠点を構え、事前相談から仲介実務まで、多くの日系企業様をサポートしています。


海外拠点地図
図1 スターツ海外拠点マップ

 
今回はASEANの中で最も多くの日系企業が進出をしているタイをご紹介させて頂きます。本記事では改めてタイ経済を整理するとともに、企業不動産の情報をご提供いたします。日系企業様の今後の拠点判断の一助になれば幸いです。 ※外務省「海外進出日系企業拠点数調査(2023年10月)」タイ 5,856 社 / インドネシア 2,182 社 / ベトナム 2,394 社 / マレーシア 1,617 社 / フィリピン 1,604社
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2. FDI・GDPから見るタイ経済の概要

タイ経済をめぐっては、ここ最近「良くないニュース」が目立ちます。たとえば世界銀行は2025年のタイの成長率見通しを1.8%へ大幅に下方修正し、観光業の回復遅れが背景にあると指摘しています。また、政治的不安定さが公共投資を停滞させ、民間投資の足かせになっているとの見方も強まり、国内需要の弱さも重なって「タイは減速局面入り」と報じられることが増えました。さらに、タイ・カンボジア国境の緊張再燃のニュースも昨年末に掛けて注目が集まりました。

これらの情報は事実ではありますが、タイ経済は本当に悪いのか、少し疑念を持ちながら2つの指標を見ました。

グラフ1_タイへのFDI(外国直接投資)流入額
グラフ1 タイへのFDI(外国直接投資)流入額

上グラフは海外からタイへの直接投資額の推移を示しています。FDIに含まれるのは、海外企業の現地法人設立や、工場・倉庫の新設、タイ企業のM&Aなどがあげられ、株や国債などは含まれていません。これは海外企業が長期的にビジネスを行う為に積極的にタイへ投資していることを現します。しかし、当社がお会いしている日系企業様から、タイへの進出や投資などポジティブな意見を聞く機会が少ない事は確かです。次に日本からタイへの直接投資額の推移を見ていきます。

グラフ2_タイへのFDI流入額(上位国別)
グラフ2 タイへのFDI流入額(上位国別)

上グラフは投資額上位5か国の推移を示しています。日本は2020年に投資額1位から陥落していると共に、唯一の下落傾向です。よって、諸外国に比べ、日本から見るタイの評価が下がってきているという事が分かりました。 しかし長年日本が多額の投資を行ってきた実績は消えることはなく、その実績は5,856 社という日系企業数に現れています。長年で築かれた日系企業の基盤とネットワークは、他のASEANにはないタイの特徴です。

表1_ASEAN主要国実質GDP成長率推移
表1 ASEAN主要国 実質GDP成長率推移

出典: IMF, World Economic Outlook(2024年10月版 / 2025年更新)
注:2025年はIMF予測値

次に、実質GDPを指標にタイとASEAN主要国を比較します。 表1におけるタイの実質GDP成長率は、全期間を通じて2%前後にとどまっています。日本を上回る水準ではあるものの、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナムの各国はいずれも概ね4~7%台の成長率を維持しており、タイはASEAN主要国の中で低い水準にあります。

表2_ASEAN主要国 実質GDP成長率推移
表2 ASEAN主要国 実質GDP成長率推移

次に、2024年の各国の総額、一人当たりGDP額を見ていきます。本表において、タイの2024年の実質GDPは約4,711億ドルで、フィリピン、マレーシア、ベトナムと同程度の規模に位置している一方、インドネシアを大きく下回る水準となっています。 一方タイの一人当たり実質GDPは約6,600ドルで、インドネシア、ベトナム、フィリピンを大きく上回っています。(※マレーシアの高い数値が目を引きますが、電子・半導体・精密機器といったいわゆるE&Eの製造比率が高い事や、石油、天然ガスなどのエネルギー資源国である事が起因しています。) 一人当たりGDPは「国民一人当たりの経済的な余力」「市場の成熟度」を現すと言われています。その為、現在のタイに於いて単純な生産拠点としてのコスト優位性を求めるには限界があり、高度化・自動化や現地人材の育成を通じ、付加価値創出型の事業へ転換していく流れが見られています。 このような中では、縮小や撤退の傾向もある一方、より一層の拡大へ転ずる企業様が多いこともタイにおける日系企業動向の特徴です。ビジネスモデルによっては、タイのマーケットが他ASEAN諸国よりも魅力的である可能性も大いにあります。

3. タイのオフィス市況と物件紹介

続いてはタイのオフィスについて記載させて頂きます。前述の通り、製造集約拠点としてのタイの姿というのは、ベトナムやインドネシアといったASEAN諸国の台頭により陰りを見せていることも事実です。 しかし、日系企業に限らず数多くの大手企業がタイをアジアのHQや中核拠点として選んでいます。

図2 ASEAN地域マップ
図2 ASEAN地域マップ

その理由として最も分かりやすいのが地理的優位性です。タイは「ASEANの中心」に位置し、周辺国への人・モノの移動がしやすいというシンプルな利点を持っています。また、本記事では詳しく触れませんが、貿易(関税)、インフラ、税制優遇の面でのメリットも大きいです。

企業が拠点を置く上で、最もスタンダードなのがバンコク中心地のオフィスビルへの入居です。直近の市況に加え、物件事例を紹介します。

図3 バンコク主要エリアMAP
図3 バンコク主要エリアMAP

グラフ3 各エリアオフィス賃料単価推移 (バーツ/㎡)
グラフ3 各エリアオフィス賃料単価推移 (バーツ/㎡)

上グラフは日系企業の利用実績が多いビルを中心に、エリア別の主要物件をサンプルとして抽出し、各ビルの平均募集賃料単価の推移をまとめています。オフィス相場全体は概ね横ばいに推移しているものの、エリアによって賃料単価は大きな差がある為、予算に合わせたエリア選定が求められます。その為当社はお客様のご希望をお伺いしたうえで、エリアと予算を鑑みて複数物件を比較しながらご提案をしています。

以下参考までにAグレードの参考物件を掲載します。

バンコクAグレードオフィス

これらの物件は築浅ハイグレードなオフィスビルで、日系の大手企業様が多く入居しています。どちらも契約期間は3年、保証金は3か月となります。 その他情報を取りたいオフィスビルがありましたら、すぐにご提供させて頂きます。

一方、少人数での利用や、準備期間としてスモールスタートをされる場合には、以下物件のようなサービスオフィスをご紹介しています。 オフィスセットアップが不要であり、短期間での利用にも向いている為、当社への問合せも多いです。

バンコクサービスオフィス

新規でのオフィス探しや、移転先の検討などの不動産賃貸に関することは、お気軽にお問合せ下さい。

4. 工業系不動産のエリアと売買事例

最後に、製造企業における生産拠点について記載します。

図4 工場エリアMAP
図4 工場エリアMAP

 
上の地図は日系企業が生産拠点を構える主なエリアを示しています。①→④に向かって流れるチャオプラヤ川は20世紀前半までのタイの物流の主力を担い、その河口にはバンコク港があります。その為川沿いには複数の工業地帯が隣接し、現在も製造企業の拠点が多数あります。しかし時代の変遷とともに河川を利用した運搬は減少し、氾濫のリスクを孕むことから主要な工業地帯は⑤~⑧の東へと移っています。また、大型船が入るに十分な水深があるレムチャバン港(⑦と⑧の中間に位置)が現在の主力港となっています。

図5 Amata City Chonburi 所在図
図5 Amata City Chonburi 所在図

 
上図の赤で記されたAmata City Chonburi Industrial Estateが最も多くの日系企業が集積する工業団地とされ、現在商工会議所ベースで145社の日系企業が拠点を構えています。お取引様との位置関係や、ご予算に合わせて適切な工業団地をご提案しています。

図6 購入・賃貸の想定スケジュール
図6 購入・賃貸の想定スケジュール

続いて、図6では購入と賃貸の2パターンで物件選定から取得(入居)までの一般的なスケジュールを記載しました。工業系の不動産の場合、所有権の移転、工場の建設、許認可取得などに一定の期間を要します。賃貸の場合、建設期間がない為購入に比べ大幅に短縮されるものの、物件が決まってから稼働まで10か月程度を見込む必要があります。まずは上記スケジュールを参照頂き、ご検討を頂ければと思いますが、個別の事情により想定より長期化するケースもございます。余裕を持った計画をお勧めいたします。

また、昨今はご売却の事例も増加しておりますので、事例を一つご紹介させて頂きます。

タイ土地 売却事例

上記は、自社工場の建設予定地としてコロナ禍以前に購入した土地を、結果的にはそのまま売却をした事例です。今後の建設予定地として土地を所有している日系企業様も多いですが、経営方針の変更や、当初見込んでいたほどの売上が期待できないといった理由でご売却のご決断をされるケースもあります。進出や拡大に伴う購入がある一方、売却のご相談が多いのもタイの特徴です。その為日系企業同士での売買事例も増えてきています。

タイはスターツの海外拠点の中でも、工業系の不動産の取り扱いが多い拠点です。構想段階でのご相談も積極的にお受けしていますので、お気軽にお問合せ下さい。

5. スターツバンコクのご紹介

スターツバンコクは今年1月でちょうど設立から20年周年を迎えました。 日系企業海外赴任者様のお部屋探し、本記事でご紹介したオフィスや工場の仲介(賃貸・売買)など、企業様に関わる不動産全般のサポートが可能です。 引き続きどうぞよろしくお願い致します。

タイ現地法人連絡先

【本記事に関するお問合せ先】
スターツコーポレーション株式会社
国際事業本部 国際部
TEL: 03-6202-0148
HP: https://www.starts.co.jp/kaigai/
本号担当者:三輪 翔永