International Division

Contact

海外コラム

企業進出 / 投資 / 生活情報

International Column

Global Letter ベトナム 編


ベトナム
~日系製造業の転換期~

目次

  • 1.日系製造企業様からのご相談傾向
  • 2. ベトナムの経済成長の歴史
  • 3.当社の取組とご売却時の注意点
  • 3-1. ベトナムの製造業
  • 3-2. 当社の取り組み
  • 3-3. 工場・土地の売却時の注意点と落とし穴
  • 4. ご相談事例
  • 5. さいごに
  • ◆ セミナーのご案内 ◆
  • 1.日系製造企業様からのご相談傾向

    初めに、当社ベトナム拠点(ハノイ・ホーチミンの2拠点)のご相談傾向について記載いたします。当社の現地拠点代表の星(ほし)によると、引き続き駐在員様の住宅に関してやオフィスに関するご相談を頂いている一方で、製造業の企業様からの縮小・撤退に関するご相談が増えてきているようです。

    進出から10年ほど経て、当初工場用地として借りていた土地面積を使い切れず一部の売却を希望するご相談や、 EPE(輸出加工)で進出をしていた企業様では、ローカル・中国系・韓国系企業との価格競争、低価格のサプライチェーン競争などによる利益圧迫や販路縮小の末にベトナムからの撤退に伴う資産のご売却相談などがございます。
    直近では、中国経由での対米国関税の税率が40%に上がったことで、ベトナム経済は伸びているものの、労働集約型で輸出を主に行っていた企業は、内需へのビジネス転換が難しいなどの要因も挙げられます。
    (参考)米国相互関税率(2025年8月末時点):日本15%、ベトナム20%、タイ19%、フィリピン19%、マレーシア19%、インドネシア25%

    2.ベトナム 経済成長の歴史

    (出典)Asian Development Bank, Asian Development Outlook July 2025
      (https://www.adb.org/outlook/editions/july-2025)

    ベトナムが注目を集めるに至った経済成長の起爆剤となったのは、1986年に開始された「ドイモイ政策」です。ベトナム語「DoiMoi」は、「新しい変化」や「刷新」といった意味をもちます。 この政策は、計画経済から市場経済への転換を図るものであり、1. 社会主義政策の見直し2. 資本主義経済の導入 3. 産業政策の見直し 4. 国際社会との協調を推進するものでした。
    以降、日系企業の進出数が加速したのは、2006年頃からとなっており、2007年のWTO加盟、2009年の日越EPA締結などが背景にあります。

    また、ベトナム全土で、大規模な市省合併が2025年7月1日に行われ、新しい自治体組織での運営が始まりました。ベトナムの経済都市ホーチミンでは、ビンズン省、バリア・ブンタウ省がホーチミン市と合併し、約1,400万人の人口を擁する大都市となりました。引き続き国内外の企業様にとって重要なビジネス拠点となっています。

    ホーチミンにおける日系企業数は、下の会員数推移のグラフが示す通り、コロナを機に鈍化しておりますが、JCCH(ホーチミン日本商工会議所)の会員数データでは現在1094社(2025年3月時点)ほどとなります。
    ※製造業はこのうち50%ほどと言われておりますが、公表データはありません。
    北部のハノイでは、9月現在の会員数は825社となります。

    参考までに、バンコク日本商工会議所:1656社、フィリピン日本商工会議所:648社となっています。

    (出典)ホーチミン日本商工会議所 HP
      (https://jcchvn.org/history/index.html)

    (出典)ベトナム日本商工会議所 HP
      (https://jcci.vn/)


    3.当社の取組と資産ご売却時の注意点

    3-1.ベトナムの製造業

    ベトナムの製造業は、かつての縫製・靴・食品加工といった労働集約型から、現在では電子部品、自動車部品、精密機械、医療機器などの高付加価値産業へも広がりがあり、日系企業においても、自動車関連、エレクトロニクス、繊維、食品、医療など多様な業種での進出があります。
    JETROの調査によると、ベトナムに進出する製造業の中で調査協力をした約400社のうち、2024年の営業利益見込みが黒字もしくは均衡と回答している企業様は約80%となっております。 一方で、当社へのご相談の傾向としては、製造業、特にEPE(輸出加工)業種における、縮小や撤退のご相談が増えてきております。

    (出典)JETRO調査記事2024年11月28日
      (https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/2737fbd089afdb85/20240024rev1.pdf)



    下掲載のJETROの調査資料は、左:今後1~2年の現地調達を「拡大」すると回答した企業の割合 右:主な生産移管元と移管先(回答企業数:657社、複数回答)を明示したものです。
    日系製造企業の進出国について、2019年~2024年では日本や中国からASEAN、特にベトナムへの生産移管(チャイナプラスワン)が顕著となっていますが、インドへの進出傾向も見られます。
    また、業種・業態により資材の現地調達の割合や必要性は異なりますが、価格競争の中で特にサプライヤー企業はコストニーズを捉えた事業展開や事業シフト、拠点シフトを長期的な視野で検討することが必要となります。
    当社では21ヵ国33都市の海外拠点がございますので、進出国シフトにおきましてもお気軽にご相談頂ければと思います。
    GL-1graph

    (出典)JETRO調査記事2025年3月7日
      (https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/335eb595e82b8c31.html)

    3-2.当社の取り組み

    当社ホーチミン拠点では、日系企業様の進出拡大・縮小撤退時における不動産に関するトータルサポートも行っております。
    ベトナムにおける工場・土地の売却に関しては、下記の通り、日本と同様の民間同士の売買手続きとは比べ物にならないほど難易度が高いため、単なる購入検討者のご紹介ではなく、 ご計画を検討し始める初期段階でオンラインもしくは現地での直接のご面談を行わせ頂き、特に縮小・撤退においてはどれほど期間を見積もるべきなのかなど、ご計画の全体フローをともに検討をさせて頂いております。

    <当社のサポート内容>
    ①状況・売却に必要な書類の整理
    ②縮小・撤退完了までの全体フローのご説明
    ③簡易査定書の作成
    ④当地独特の商慣習・売り方をまとめた資料の作成
    ⑤不動産売買に関する業務全般
    ※その他(弁護士やコンサルティング会社等の提携企業様のご紹介)

    上記の①②までは原則無料でのご対応を行っております。③以降につきましては、業務内容により別途手数料を頂戴しております。

    3-3.工場・土地のご売却時の注意点と落とし穴

    特に撤退時では、不動産売却のみならず、設立以降の税務調査など、全体の整理を行う期間に数か月~2年ほどの期間がかかります。手続きが煩雑で長期的なため、日本人責任者が日本に帰任された後、現地にいるベトナム人に任せている反面、不安も多いという声も耳にします。
    当社では、このようなケースにも対応しており、【現地法人⇔スターツ⇔日本本社】の形態で間に入り、適宜状況のご報告や懸念事項の共有など行います。

    さらに、売却時の落とし穴として【建物の所有権証明書などの書類が手元に無い】というケースもございました。証明書発行当時の状況が詳細に引き継ぎされておらず、想定よりも売買に時間がかかる事態が発生します。 所有権証明書などの書類がない場合は、売買契約を行うまでの手続きがより煩雑になり数か月間の遅延、もしくは契約ができない事態も考えられるため、想定していた撤退時期より "やむを得ず後ろ倒し" することに繋がります。

    土地利用権の譲渡について、そもそも工業団地や現地の人民委員会側が同意するかどうかも確認が必要となり、単純に買い手を探してくればよいという話ではないため、1つ1つ課題を二人三脚でクリアしていくことが重要になります。
    稼働中の工場売却のケースでは、従業員にも売却の動きを悟られないように進める必要性があるなど、一層慎重に進めなくてはなりません。それらの現地特有の事情もあり、一般媒介契約ではなく、最初から専任媒介契約にて、信頼のおけるエージェントが間に入り、買い手を探していくことを推奨しています。

    そのため、戦略的・計画的な撤退においては、現地に精通した信頼できる不動産エージェントとの協力体制が必要になってまいります。


    4.ご相談事例

    Binh Duong省の工業団地内工場のご売却相談事例

    GL-1graph
    <ご相談概要>
    ・土地:約10,000㎡
    ・建物:約2,400㎡(工場・事務所)
    ・コロナを機に外資系製造会社からの注文がストップし稼働停止
    ・再稼働の目途が立たず、撤退による工場・土地のご売却

    早期でのご相談により、ベトナム企業への売却にて話が進んでおりますが、下記様々なハードルがございました。

    1. 建物の所有権証明書が無い
    2. 予期せぬ買主からの追加資料要求
    3. 省庁/省市再編による手続きの遅延など

    各段階で通常の流れとは異なることが多々起こりましたが、1つ1つ関係先と調整・確認をしながら丁寧に進めております。
    売主・買主共に日系企業であれば、日本人の感覚で話を進められるため、ある程度終盤になれば話がこじれることは少ないものと思いますが、 やはり現地ローカル企業などが買主になるケースなどでは、最後の最後まで何が起こるかわからないという姿勢で臨む必要があります。

    (参考)Binh Duong省
    ホーチミン市内中心部から国道13号線を北へ30km、車で1時間30分ほど



    5.さいごに

    ベトナムはASEANの中でも経済成長が著しい魅力的な市場の一つでありますが、関税や近年でのローカル・アジア系企業との価格競争、ベトナムならではの商慣習など、ビジネスハードルは決して低くないと考えます。
    進出拡大・縮小撤退のいかなるフェーズにおいても、まずはご検討を始めた早期でのご相談を頂き、状況整理や今後の展開イメージについてお話を伺わせて頂ければと思っております。
    ご状況によっては、想定される期間よりもはるかに手続きが難航することも考えられます。 まずは全体像を把握し、適切な対応策を共に検討をさせて頂くことで、より構想を具体化できるものと思っております。
    ぜひお気軽にご相談くださいませ。


    セミナーのご案内

    - ベトナム・インドの事業用不動産セミナー -

    【日時】10月8日(水)日本時間13:00~
    【内容】1. 事業用不動産市場の最新動向
           2. 物件選びにおける具体的な注意点について
                    3. 実際の物件事例のご紹介

    ご関心ございましたら、 コチラからお申込みをお願いいたします。

    本セミナーには、当社ベトナム代表の星(ほし)も登壇しますので、今後の個別相談のきっかけの場としてもご活用いただければと思います。皆様のご参加お待ちしております。

    https://www.starts.co.jp/kaigai/india_vietnam_seminar_202510/





    お問い合わせはこちら





    連絡先



    ■スターツ現地拠点
    STARTS INTERNATIONAL VIETNAM CO., LTD

    Hanoi Branch
    Adress : Unit 4.11, CornerStone Building, 16 Phan Chu Trinh Str.Hoan Kiem Dist., Hanoi
    TEL : +84-24-3936-9884

    HP : https://kaigai.starts.co.jp/vietnam/


    Ho Chi Minh Branch
    Adress : 10th Floor ,The Nexus Building 3A-3B Ton Duc Thang St., Dist.1, HCMC
    TEL : +84-28-3520-8143

    HP : https://kaigai.starts.co.jp/vietnam-hochiminh


    ■国内連絡先
    スターツコーポレーション株式会社
    国際事業本部 国際部

    TEL : 03-6202-0148

    HP : https://www.starts.co.jp/kaigai/

    本号担当者 : 家村 潤
    私は、2024年度にベトナム駐在をしておりました。エリア性や商慣習など、把握しております。
    現地賃貸・売買、新規進出・移転などご検討の際はお気軽にお問合せ下さい。