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Global Letter マレーシア/クアラルンプール編
Asia・Oceania

マレーシア
~マレーシアの市況と賃貸オフィスの不動産商習慣について~
①はじめに
マレーシアでは年々人口が増加、かつ経済の成長しております。そんなマレーシアでは近年、主要都市であるKLCCとは別にTun Razak Exchange (TRX)という金融特区エリアが台頭して注目を集めております。本号ではそのTRXとオフィス不動産の商習慣をお伝えいたします。
②マレーシアの概要
マレーシアは東南アジアの中で、シンガポールに次ぐ経済発展レベルを維持しつつ、人口増加が続く稀有な国です。
・人口、経済成長:
1990年代は1,700万人台だったことに対し、2025年は3,600万人と約二倍に増えております。過去10年では1%弱で毎年増えており、2030年には3,700万人に達する見込みです。また、20代から40代の占める割合が多く、労働力の確保により経済成長も見込めます。
参照:https://dashboard.e-stat.go.jp/pyramidGraph?screenCode=00570®ionCode=458&pyramidAreaType=1#
また、マレーシアはASEAN5の中でも一人当たりのGDPが突出して高く、様々な国家政策により経済は力強い右肩上がりの状況にあります。
・主要産業
マレーシアは半導体産業が非常に盛んで、組み立てからパッケージングまで世界シェアの約13%を占めています。2023年時点での産業規模は約2.1兆円に達し、2024年には「国家半導体戦略」が打ち出され、国を挙げての発展に注力しています。過去5年で多くの日系企業が半導体関連の投資で法人設立や工場の新設を行っております。
③主要経済圏と注目のエリア
クアラルンプール市内では、長らく象徴的なエリアとしてKLCCが不動の人気を確立してきましたが、近年では新たな国際金融特区としてTun Razak Exchange (TRX)の開発が目覚ましく進展し注目を集めております。
・ KLCC(クアラルンプール・シティ・センター): ペトロナスツインタワー周辺にオフィス、商業施設、5星ホテルが集まる中心街です。ショッピングモールや日本人学校、日系スーパーが多く、日系企業の駐在員に人気のエリアです。
・Tun Razak Exchange (TRX): 政府主導の国際金融特区です。商業の中心地であるKLCCと最大の繁華街であるブキッ・ビンタンに隣接していることから人を集客しやすい、また交通の便では電車2路線が止まり人材集まりやすいようこのTRXが金融特区に選ばれました。
TRX内にはHSBC(香港上海銀行)やPrudential等の金融機関の本社が移転済みで、これまでのKLCCに代わる「新・金融中心地(New CBD)」としての地位を確立しました。
エリア内にあるモール「The Exchange TRX」には西武百貨店や無印良品などの日系企業も出店しており、商業・居住の両面で注目を集めています。
2032年には世界大学ランキングに例年30~40位に位置するオーストラリアのモナッシュ大学が建設予定で、世界から優秀な学生をマレーシアに集める狙いがあります。
また同地区内では、39階建てのオフィスビルが2029年に竣工予定で建築中となり、そのオフィスには大手会計事務所のPwCが国際ビジネスの拠点として移転予定となります。
国際金融特区(TRX)の優遇制度:
TRXはマレーシア初の国際金融特区であり、世界の一流企業が拠点を構えるビジネスの中枢です。一定の条件を満たす金融・フィンテック関連企業には、以下のような強力なインセンティブが提供されます。
・主な優遇内容: 2026年3月時点
‐10年間の法人税100%免除。
‐融資・サービス契約に係る印紙税の免除。
‐賃料の二重控除: 支払う賃料の50%を追加で税務控除(実質150%控除)でき、10年間の繰り越しが可能です。 ※取得にはTRX内への拠点設置と財務省の承認が必要です。
④ 政策・インフラ計画
市場を動かす大きな要因が、従来の不動産需要を変動させています。
・「チャイナ・プラス・ワン」とハイテク投資: 米中対立を背景に、EV社のテスラがサイバージャヤに地域拠点を設立したほか、アメリカの半導体メーカーのIntelやドイツの自動車向け半導体メーカーのInfineonによる巨額投資が相次ぎ、関連サプライヤーのオフィス・工場需要が急増しています。
・MRT3(環状線): 首都圏の既定路線を繋ぐ新路線として政府が約一兆円以上をかけ開発. 2032年の開通を目指しており、計画駅周辺では地価上昇への期待が高まっています。
⑤ 賃貸オフィスの現状
不動産大手JLLによると2025年第四四半期のクアラルンプール市内のオフィス空室率は約18%と借り手市場になっております。これはコロナ禍以降のリモートワークの普及と、オフィスの過剰供給が要因とされております。
しかし、最近では前述した KLCCやTRX内でのオフィス移転が多く見受けられます。主に築年数の浅い物件、高度なインフラ設備を備えた物件が移転先となります。
これは企業としてのESG(環境・社会・企業統治)目標の達成や主要エリアにオフィスを構えることで企業のブランドを確立し人材を呼び込みやすくなることが目的とされています。
⑥ 不動産取引における商習慣の違いと実務リスク
マレーシアの商習慣は、日本の「借主保護」の文化とは大きく異なります。
・手続きの順序: 日本では契約内容に納得してからデポジット(敷金)を支払いますが、マレーシアでは「まずデポジットを払って物件を確保し、その後に契約書を確認する」のが一般的です。事前に契約提示を求める交渉は、極めて成立しにくいのが実情です。
1.内覧・合意 → 2. LO(申込書)署名 → 3. デポジット支払い → 4. 契約書提示・合意 → 5. 残金支払い → 6. 引渡
デポジットの支払い後に契約書や物件の規定などが開示され、希望条件にそぐわずキャンセルする場合でもデポジットの返還は御座いません。
・物件情報の閉鎖性: マレーシアではインターネット上での物件情報は日本に比べ豊富ではなく、またご情報が掲載されていることも多々あります。さらに店舗物件はネットに出回らず、現地で看板を探すようなアナログな手法が依然として有効です。
・弁護士介入と公証の義務: 契約作成は弁護士のみに許されており、賃貸でも弁護士費用が発生します。また、裁判での対抗要件として印紙税の納付(スタンプ)と公証が必須です。
・実務リスクの例: デポジット支払い後に開示された内装規定が想定外に厳しく、工事費が予算の3倍に膨らみ、結果として出店を断念しデポジットを放棄せざるを得なくなったケースも存在します。
【取引事例】
クアラルンプール市内での事業拡大に伴う法人様のオフィス移転をお手伝いさせていただいた事例をご紹介します. こちらの法人様は以前のオフィス探しでも当社をご利用いただいたリピーターのお客様で、初回の取引内容にご満足いただけたことから、今回2度目のご依頼を頂きました.
今回は従業員数が10名から30名規模へ増えることを見越した増床が主な目的で、移転先には利便性の高さを重視し、KLCCのサービスオフィスから南東に車で20分ほどにある「KLエコシティ」の一般オフィスへと拠点を移されました。KLエコシティは鉄道駅や大型ショッピングモールに直結しており、マレーシアで理想とされる職住近接を実現できる非常に人気の高いエリアです.
当社マレーシア拠点代表の小出によれば、クアラルンプール市内でオフィス仲介を専門に行う日系不動産会社は多くなく、当社では現地特有の商習慣に伴うリスクを最小限に抑えることももちろん考慮しています. 今回の取引においても何度か交渉を行い、通常はデポジットの支払い後に契約書の開示されるところを、入金前に開示させることができました。これにより、マレーシアでのオフィス契約で懸念されがちな契約後のトラブルを未然に防ぎ、透明性が高い取引が実現できました。
【注目の物件紹介】
・物件名: Naza Tower(ナザ・タワー)
・エリア: KLCC
・賃料: RM 76 /㎡(1RM=39.95円、2026年3月8日時点)
・特徴: KLCC公園に隣接するナザ・タワーは、50階建ての高層ビルです。主要高速道路にもアクセスが良く、また周辺には商業施設も多く企業ブランディングに最適の物件です。
・物件名: The Exchange 106(ザ・エクスチェンジ106)
・エリア: TRX
・賃料: RM 150 /㎡(1RM=39.95円、2026年3月8日時点)
・特徴: LEEDプラチナ認証取得した物件で、西武デパートにも隣接しております。前述のHSBCも本物件にオフィスを構えます。非常に人気の物件のため現在は満室ですが、募集が再開され次第ご紹介可能となります。
⑦スターツマレーシアの紹介
今後も経済政策や人口増加、物価上昇と共にマレーシア不動産市場は堅調に推移することが予想されますが、物件選びには、現地特有の地域事情や物件事情もありますので信頼出来るパートナーを味方につけることが重要です。
弊社では、日系企業様がマレーシアの物件を探す際、滞りなくスムーズに、かつ戦略的に拠点を設立できるよう、不動産選定から弁護士連携、内装規定の確認までワンストップでサポートしております。マレーシア進出のご検討は、ぜひ実績豊富な弊社までお気軽にお問い合わせください。
Starts International Malaysia Sdn. Bhd.
Website: https://kaigai.starts.co.jp/malaysia
Suite 8.01, Level 8 Menara Binjai, No.2, Jalan Binjai, 50450, Kuala Lumpur, MALAYSIA
Mail: masaki.koide@starts.com.my
【本記事に関するお問合せ先】
スターツコーポレーション株式会社
国際事業本部 国際部
TEL:03-6202-0148
HP:https://www.starts.co.jp/kaigai/
本号担当者:髙橋 友樹